優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「構わないが。それだと、社長の俺に従わないということになるが?それを理由に役員から外してもいいんだぞ。いいのか?」

壱哉さんが役員じゃなくなる?
そしたら、おじいさんとおばあさんが頑張ってきた会社を取り戻せなくなるかもしれない。

「そうだなあ。日奈子ちゃんが会社を辞めたら、壱哉を役員から解任しようかな」

壱哉さんが専務でなくなる!?

「そんなの絶対、だ、だめです!私、広報部で働きます!」

「日奈子は関係ない」

「関係あります。私、広報部に行って働きますから!壱哉さん、お仕事頑張ってください」

なるべく、平静を装った。
こんな時に壱哉に余計な心配をかけたくない。
水和子お姉ちゃんは勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「壱哉さん。これ、お弁当です」

笑顔を作り、お弁当を渡すと慌てて広報部へ向かった。
壱哉さんの立場を守るためと思えば、大丈夫。
広報部での新しい仕事もがんばれる。
それに倉庫で手伝ってくれた人達もいるし。
広報部に行くと、泣いている女子社員が数人いた。
なにが―――?

「あのどうかしたんですか?」

私が声をかけると、顔をあげた。
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