優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
それだけで、単純な私は元気が出てしまう。

「お仕事、頑張りましょうね!」

昼休みに向けて!

「そうだな」

壱哉さんは笑った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


出社すると、広報部に私の仕事はない―――けれど、お茶くらいはいれられるし、ゴミを捨てたり、掃除もできる。
そういう仕事は家事をしていたおかげで、慣れていて、私でも大きな失敗をせずにこなせる。
お茶をいれたり、掃除をしていると、コピーを頼まれたり、ファイルの整理を頼まれたりするようになった。
それが少し嬉しい。
いそいそとファイルを棚に戻していると、広報部のフロアが水を打ったように静かになった。
なんだろうと思って、振り返ると水和子お姉ちゃんが立っていた。
とっさに観葉植物の陰に隠れたけど、鋭い視線に全員が目を合わせずにいた。
私の席を見て、いないのを確認すると満足そうに去って行く。
きっと、私が我慢できなくなって、どこかでサボっているとでも思っているんだろうけど。
見つからなくてよかった。
もし、見つかっていたら、広報部の誰かが嫌がらせを受けたかもしれない。
私も素早く動けるようになったよね?
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