優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「私達、専務と日奈子さんを応援してるから」

「えっ?」

「専務は今まで近寄りがたい空気があったけど、日奈子さんがいると話しかけやすいから」

そうかなあ。
私の緩い空気が混ざるとそうなるのかな。
でも、悪い気はしない。
頼まれた書類を経理に持って行こうと歩いていると、言い争う声が聞こえた。

「指図するつもりか!」

安島さんの怒鳴り声だった。

「ですが、この取引先は会長の代からの付き合いで、社長はお祝いの会には必ず出席しております」

見ると、安島さんがドンッと今園さんの肩を強く押し、細い体がよろめき、壁に体を打ち付けた所だった。
今園さんを見る安島さんの目は怖く、憎悪の色を浮かべて、上から見下ろすように見据えていた。
助けないと!そう思い、とっさに飛び出したまではよかったけど、自分の足につまずき、ずさあっと二人の前に転んだ。

「この愛人の子が。クビだ。会社から出ていけ」

そう安島さんが今園さんに吐き捨てるように言うのが聞こえた。
えっ?

「あ、愛人の子って」

「今園は俺の異母妹だ。こんな暗い女が妹なんて自慢にもならないから、言わないでくれよ?」
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