優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
いいわね―――私が日奈子に壱哉を奪われた痛みもわかるだろうし。

「素敵な舞台を決めてあげなるわ」

我ながら、名案だった。

「日奈子は絶対にクビにしないと許せない」

壱哉と付き合えたからって、もしかして私に勝ったつもりでいるの?
二人で見せつけるようにお昼を食べたり、朝は一緒に通勤してきて―――
イライラしながら、広報部へ向かう廊下を歩いた。

「部長はいるかしら?」

「なにか用かね」

私から何を言われるのかと部長は嫌な顔をした。
きっと数人を倉庫に異動させたことも気に入らないのだろうけど、表立って批判できないのが、残念ね?

「ええ。ここに配属になった私の妹だけど、そろそろ仕事に慣れた頃でしょ?」

「慣れた?仕事をさせるなと言っていたじゃないか!慣れるも何も、広報部の仕事はさせていないぞ!」

慌てふためく部長を無視して続けた。

「それで、もうすぐイタリア食材のフェアがあるわよね?」

「確かにあるが」

「それを妹に任せてほしいの」

「そんな無茶な!」

「三日間ある内の最終日は私が引き受けるわ」

部長は青い顔をし、日奈子を見ていた。
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