優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「スーパーの試食じゃあるまいし」

「どうです?おいしいですよ」

シェフは気を悪くせず、トマト缶で煮込んだチキンのトマト煮にバジルを添えて、差し出した。

「けっこうよ」

「そうですか」

おいしいのに。
そう思っていると、壱哉さんがやってきて、シェフの手伝いを始め、なぜか、さっきまではいなかった女性の招待客が並びだした。
ちょ、ちょっと―――!
一度食べた人まで!?
壱哉さんは芸能人じゃないんだからっー!!
あっ!
しかも、手にわざわざ触れてない!?
距離も近いし!
洗い物どころじゃないっ。
ささっと壱哉さんの隣に行くと、手をつかみ、私がいたキッチンスペースに連れてきた。

「日奈子」

「だめです」

もう手伝い禁止にしようと思った。

「やきもちか」

「そ、そうです。だって、必要ないのに壱哉さんに触るから」

「じゃあ、やめておこう」

壱哉さんは笑っていた。
子どもっぽいのはわかってる。

でも、あまりにモテすぎるから!

「手伝おうか?」

「壱哉さんに洗い物なんて、させられません」

「じゃあ、洗ったものをふこうか」

「壱哉さんは専務なんだから、そんなことしちゃだめです!」
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