優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
ホテル、週刊誌、渚生―――相手は日奈子のはず。

「それ、日奈子でしょ?」

「えっ!?私、渚生君と食事してないよ」

「当たり前だ。渚生と二人で食事なんかさせるか」

「壱哉。ひどいなー」

軽い声と一緒に現れたのは渚生だった。
しかも、隣には今園がいる。

「俳優の渚生じゃない!?」

「本当!?」

『もしもし?水和子お姉ちゃん?』

緋瞳に追い討ちをかけるように渚生が言った。

「週刊誌に書かれちゃってさ。会見、開くから、騒ぎが収まるまでは彼女のことを壱哉に頼みにきたんだ」

「会長宅に連れていくしかないな」

壱哉はため息をついた。

「今園らしくない」

「申し訳ありません」

そう答えた今園はいつものロボットみたいな顔ではなく、微かに微笑みを浮かべていた。

『水和子お姉ちゃん、そこに渚生がいるの!?』

「ええ。彼女とね」

そう言って、電話を切った。
緋瞳はかなり参っているみたいだけど、今は自分のことよ。
このままじゃ、イベントがなくなってしまう。
日奈子をクビにするどころか、私の失敗として自分のクビが危ない。

「渚生、事務所の子でスケジュールが空いてる子を呼んで」
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