優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
手伝いをしてくれた女子社員がちらちらと私の手を見ながら、言った。
「その指にある指輪って、もしかして婚約指輪ですか?」

「えー!もしかして!専務から?」

落とすと困るから、外していたけど、つけてないのを見た壱哉さんが毎朝、指に指輪をはめているかどうかチェックして、つけてないと指輪を持ってきて指にはめるので、身につけるようにしていた。

「で、でも、結婚とかはまだ」

「社長になったら、籍を入れると言った。そうだよな?日奈子」

「は、はい」

一際、大きなざわめきが起きた。
え?な、なんで?
そんなに私と壱哉さんの結婚は驚かれるの!?
ま、まあ、そうだよね。
相手が私じゃそうなるよね……。

「尾鷹専務。もしかして」

「そうだ。明日、臨時株主総会を開く。そこで、このまま、安島の体制でいいのかどうか、株主総会で決めることになる」

「そうですか」

部長や課長達は真剣な顔でうなずいた。
あ、あれ?
私と壱哉さんの結婚は問題にされてなかった。
私がわからずにいると、壱哉さんが言った。

「俺と安島、どちらを社長にするか決めるんだ」

「そ、そんなの壱哉さんに決まってます!!」
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