優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
上品な老夫婦が客間の窓を開け放ち、庭が見える場所でゆったりとした雰囲気でお茶をしていた。
会長夫人の方を見ると、どこかで見たようなことがある顔をしていた。
そう何度か会ったことがある。
向こうもそう思ったらしく、しばらく私と顔を見合わせていた。

「あっ!」

「あらまあ!」

「なんだ?二人は知り合いか?」

会長が驚いて会長夫人に尋ねると、口に手をあてて笑った。

「いえいえ。あなたに頼まれて、スーパーまでよく買い物に行っていたでしょう?いつものスーパーじゃ買えない食べ物をね」

「うむ」

「私も歳だから、消費期限や賞味期限の文字が見えにくくて。よくスーパーにいるかんじのいい子に見てもらってたのよ。いつも嫌な顔せずに見てくれてね」

「マルトクスーパーですよね」

「そう」

やっぱり。
よく声をかけられると思っていたけど、狙われていたとは……。

「それが壱哉が選んだお嫁さんとはね。優しい子でよかったわ」

壱哉さんはちらりと私を見た。

「まさか会長夫人とは知らず……」

照れていると、壱哉さんは穏やかな口調で言った。

「結婚を認めてもらえますか」

「もちろんよ、ねえ?あなた」
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