優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「そうだ。そもそも、お前の結婚に口出すつもりはなかった。ただ選んだお嬢さんを見たかっただけだ」

二人は顔を見合わせていた。
穏やかで信頼し合っているのが伝わってきた。
なんて素敵な夫婦だろうな―――私も歳をとってもこんな夫婦でいたい。

「日奈子さん、壱哉をよろしくね」

「はいっ!鈍臭いですけど、できるかぎり壱哉さんを助けたいと思ってます」

鈍くてトロくて、何をやっても平均点。
でも、以前よりはきっと何かできるはず。
私にしかできない、何かが。
そんな気がした。

「壱哉、日奈子さん。一緒にお茶をどうぞ」

「はいっ!」

元気に返事をした私を見て、壱哉さんは静かに微笑んで、そっと指を絡めて手を繋いだ。
その手を握り返して、私は微笑んだ。
私と壱哉さんは並んで座ると、数十年後もこうしてここで二人でお茶を飲む姿が目を閉じると想像できた。
だから、ありえないことなんか、何一つない。
きっと――――
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