優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
そういうこともあり、俺はなるべく自分からは誰にも近寄らないように気を付けていた。

「お姫様は水和子ちゃんにけってーい!」

歓声が起きて拍手の音が教室に響く。
よし、決まったなと確認してから俺は言った。

「魔法使いをやる」

「えっ!?でも、壱哉」

「いいですよね?先生」

「あ、ああ。もちろんだ。尾鷹君」

担任は昔から近所に住んでいて、尾鷹の家に遠慮している。
申し訳ないと思ったが―――

「王子は誰にしようか」

野月(のづき)君はどう?」

クラスの誰かが言った。
そういえば、そんなやついたな、と思っていると俺の隣に座っていた。
恨めしい顔で俺を見た。

「嫌だ」

そう言ったけれど、野月の拒否は許されず、王子に決まったのだった。

「ずるいだろ」

野月は泣きそうな顔をしていた。
無口であまり話さない野月だが、見た目だけはよかったせいだろう。
女子に人気があった。

「悪い」

「俺、人見知りなのに……」

「いい機会だ、直せ」

「ふ、ふざけんな!」

ぶるぶると泣き出しそうな顔をして野月は顔を赤くしていたけれど、決まった物はしかたない。

「がんばれよ」
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