優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
『ウェディングリースにはね、永遠に幸せでいられますようにって意味が込められてるの。杏美ちゃんに幸せになってほしいから』
そう言って、日奈子がくれた小さなウェディングリースはドライフラワーにして大切にとってある。
小さなアパートで暮らす今も。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「そろそろ私が食事を作るわ」

「杏美さん、食事は自分が作りますから」

仕事から帰ってきた貴戸が遠慮をしてか、そんなことを言った。
そんな夕飯は私が炊いた白いご飯と貴戸が作ってくれた野菜炒め、みそ汁。
もう運転手とお嬢様じゃないのにね。
なかなか昔の癖が抜けないんだから。
貴戸は尾鷹の祖父母に紹介してもらった会社で働いている。
会社の社長に気に入られて、忙しくしてるから家事は私がって思っているのに貴戸は先回りして家事をしてしまう。
慣れてない私はとても作業が遅い。
日奈子のことを笑えないくらいにね……。
でっ、でも!
すぐにできるようになるわよ?
アイロンの使い方を最近は覚えたし、ハンカチくらいはかけれるようになったんだから。
それに―――

「貴戸。まかせて。カレーライスくらいなら作れるわ」
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