優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
水和子さんが持つ自分への好意を知っていて、会わないようにし、尾鷹の家に来させて妹の就職をお願いする。
その後、自分の秘書にさせて日奈子に近づく。
もうね、そのあたりで私はピンときたわよ?
お兄様がそうなるように誘導したんじゃないかって。

「お兄様、一歩間違えれば犯罪者よ」

「なんのことだ」

お兄様は失礼なという顔をした。

「杏美。何をしていたんだ?」

「カレーライスを作ろうと思っていたのよ」

「お前が?」

「そうよ」

ほら、見なさいよ!と堂々と並んだ材料を見せた。
その並んだ材料を眺めたお兄様は酢を手にとった。

「さすがにこれはないな」

「そんなことないわよ!隠し味よ!」

「隠れないだろう。これは」

「う、うるさいわね、お兄様だってカレーライスは作れないでしょ!?」

「作れるが?」

な、なんですって!?
包丁を手にして、平然した顔で私を見た。

「合宿や学校の行事、授業に家庭科があったからな」

全てにおいてパーフェクト。
そうお兄様は言われていたけど、料理まで?
まさか……。

「杏美。俺がカレーを作るから、お前は日奈子に手紙を書け」
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