優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「おっちゃん!生中もう一杯っ!」

野々宮さんが空のジョッキを持ち上げて言うと居酒屋の店主は苦笑した。

「おいおい!飲み過ぎじゃないかい!?史乃(あやの)さん。この辺にしておかないと」

「そうですね。野々宮さん、ここで引いた方が得策かと思われます」

「うるさーい!ほらっ!今園!あんたも飲みなさいよ!ううっ……受付の後輩がまた結婚した」

それで荒れていたらしい。

「野々宮さんには素敵な人が現れますよ」

「は?あんたもでしょ?」

「無縁の話です」

尾鷹(おだか)商事の秘書室に君臨する女王様がなに言ってんのか」

女王ならよかった。
そうすれば、こんなに苦しまずに悪い男を断罪できたのに。
安島(あじま)常務の顔が浮かんだ。
尾鷹(おだか)の家と私をいつまでも苦しめる安島の家をどうにかできたはずだ。

「お姉さん達元気だねー」

グッチのサングラスに大きめのスプリングコートにパーカー、黒のクロップドパンツ、スニーカーというラフな服装にも関わらず、すごくお洒落に見え、一目見ただけで一般人とは違うと察した。

「どなたですか」

「名乗るほどの者じゃないよ。ね、店長」
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