優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「よーし!お姉さんがおごっちゃうー!生中、追加でー!」

まだ飲むつもりだろうか。
すでにできあがっている野々宮さんはまだまだいけるっとノリノリだった。
残念ながら、いけそうにはないのですが。
その希望的観測はどこからくるのだろうか。

「野々宮さん、もうやめた方が」

「今園も飲みなさーい!」

ドンドンッと生ビールのジョッキが並べられた。

「せっかくだし、飲もう?」

CMに出演している笑顔だった。
野々宮さんは顔を伏せて眠ってしまった。

「あーあ……史乃さん、また寝てしまったか」

店長ががっくりと肩を落とした。

「もっと強く止めるべきでした。申し訳ございません」

「今園さんのせいじゃないよ……」

店長は慣れた様子で畳の部屋がある休憩室に寝かせていた。

「起きたら送るしかないねー。店長っ!」

「そのようだ。渚生。お前、わかってて煽ってないだろうな?」

「なんのこと?」

天使みたいな笑顔を浮かべて、野月さんは店長の言葉をかわした。
店長はやれやれとため息をついて、だし巻き卵を焼いていた。
まだお客さんはそこそこ入ってきていて、ゆっくり話している余裕はない。

「今園さんだよね。壱哉から聞いてるよ、優秀な秘書さんってね」

「はい」

「結婚が無縁ってどうして?」

「家庭を持とうとは考えていないという意味です」

「それは安島のせい?」
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