優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
タコとキュウリの酢の物をつまんでいた箸の手をとめた。
壱哉さんから聞いているのだろうか。
じろりと見つめても動じる様子はない。

「あなたには関係のないことです」

「そうだね。興味本位だったよ」

「私の生い立ちをご存知なら、興味本位で聞くことがどんなに失礼なことか、わかりませんか?」

「生い立ちはともかく、無縁って言ったから気になってさ」

「無縁です」

「そこまで悲観しなくても」

軽い口調で言われたことに腹が立った。
安島の父との間に生まれた私は認知はしてもらえたけれど、父と呼ぶことは許さず、正妻にいじめれていてもい知らん顔で新しい愛人の所へと出かけて行った。
その異母兄は私を蔑み、自分の残飯を渡しに食べろと言ってきた。
まるで、汚い野良猫でも拾った程度の感覚だった。
彼らは。

「君は結婚っていうんじゃなくてさ。人を信用してないんじゃないかな」

「あなたに何がわかるっていうんですか!」

「わからないけど、人は変わることもあるって言いたかっただけだよ。俺がそうだったから」

「気分が悪いので失礼します」

席を立ち、お金を置いた。
野々宮さんの分も支払っておいた。
< 261 / 302 >

この作品をシェア

pagetop