優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「待って。送るよ」

「結構です。週刊誌に写真でも撮られたらどうするんです?」

「平気だって。その時は壱哉にもみ消してもらおうかなー」

「尾鷹専務に迷惑をかけないでください!」

「はーい。じゃ、行こうか」

店長にお金を渡し、お釣りは寄付するよと言っていた。
なんて軽い男。
外に出ると涼しくて夜の気配が心地よい。
隣にこんな男がいなければ、いい気分でマンションまで帰れたというのに。

「今園さんは会社にいい人とか、好きになれそうな人もいないんだ?」

「そうですね。たとえいたとしても、私は魔女らしいので誰も寄り付きませんよ」

しつこい。
きっと人から嫌われるということを知らない。
だから、こんなあけすけに物を言えるのだ。

「君が魔女だっていうなら、俺を誘惑してみてよ」

「は―――?」

「それくらいできるでしょ?魔女ならさ」

私は魔力を持たない魔女だ。
なんの力もない。
本当に魔女ならよかった。
泣きたい気持ちでうつむいた。

「その顔は悪くないね。いつもはすましていて、悲しい顔をする。やっぱり君は魔女かな。君はきっと魔女になる呪いをかけられたんだよ。悪い魔法使いにね」
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