優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「軽く流してくれればいいのに」

「性分ですので」

「本当の今園さんはもっと可愛いはずだけどなー」

「可愛いなんてやめてください。気持ち悪いだけです」

「気持ち悪い!?そこまで言わなくてもいいんじゃないかな!?」

ピシッと空気が凍った。
いつもこうだ。
話しているうちに険悪になり―――

「もっ、もうやめてくれー!」

おでん屋の屋台のおじさんが止め入る。
暖かく白い湯気も私と野月さんが話すと寒々しい冷気に変わる。

「おでんを食べているのに寒気がするんだが」

「奇遇だな。俺もだ」

「おやじー!熱燗(あつかん)をつけてくれ!」」

他の客が次々と熱燗(あつかん)を注文し始めた頃、私達は解散する。
次の約束もしないまま。
二度と会うものか!!とお互いに思いながら。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


それがどうしてこうなるのか。
私と野月さんは屋台での言い争いの後、すぐに会う羽目になった。

「どうも」

子供みたいに不貞腐れているその姿に『可愛い』と思うのは失礼かもしれないが、私にすれば子犬のようなものだ。

「冷静ではないようですね。この場から即刻お帰り下さい」
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