優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「は!?壱哉に頼まれてきているんだけど!?」

「今園、渚生。お前達はどうしてそんなに仲が悪いんだ?」

壱哉さんは溜息を吐いた。
この私が壱哉さんの障害となるなど、許されないことだ。

「申し訳ありません。どうしても気が合わないという人間と言うのはいるものです。それがたまたま、壱哉さんのご友人だったという事実に私はひどく戸惑っております」

へぇ、と壱哉さんは笑った。

「今園が珍しいな。他人に対して感想を持つのは」

言われて気づいた。
そうかもしれない。
いつも好きも嫌いもない。
ただそこにいる人間として付き合わなければいけないため、合わせることが多く、なんの感情もなく接していた。

「日奈子さんのことは興味深く思っております」

「それはよかった」

壱哉さんは日奈子さんのことに対しては優しい顔で笑う。
作り笑いではなく。
そのせいか、私も興味があった。
完璧で何をやらせても平均以上のことをこなしてしまう優秀な若様、尾鷹壱哉さん。
尾鷹商事の会長の孫で周囲から大切に育てられてきたのと同時に厳しい教育を受けてきた。
尾鷹の家を継ぐ者として。
< 266 / 302 >

この作品をシェア

pagetop