優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「……了解しました」

壱哉さんのご命令なら仕方ない。
野月さんの顔を見たけど、傷ついてはないようだった。
よかった。
―――よかった?
なぜ、私は野月さんを気にかけているのだろうか。
不思議に思いながらも、壱哉さんのためにお姫様奪還作戦を開始したのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


梯子を片付け、野月さんと合流すると、日奈子さんが帰ってくるまで時間が空いてしまった。

「嬉しそうな顔で壱哉とでかけて行ったよ」

そう言った野月さんも嬉しそうな顔をしていた。
悔しくはないのだろうか。
好きな人が目の前で恋敵とでかけて行くのを見るのは―――

「なに?俺の顔をじっと見て」

「日奈子さんに好意を持ちながら、なぜ惜しみ無い協力をなさるのか興味深いと思っていました」

「日奈子ちゃんには幸せになってほしいんだ。尾鷹は大変な家柄だけど、壱哉が絶対に日奈子ちゃんを守るって信じてるから協力している。好きな人の嬉しい顔を見るのは嫌じゃない。だから、今園さんにも笑っていて欲しいと思ってるよ」

私?
なぜ、私なのだろう。
野月さんと顔を見合わせた。
< 268 / 302 >

この作品をシェア

pagetop