優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
なんとなく、気まずい沈黙の時間が流れた。

「えーと、今園さん。時間があるし、おでんでも食べに行く?」

「そうですね」

―――私達は初めて申し合わせて飲みに行った。
それに野月さんは気づいているだろうか。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


おでんの屋台に行くと、横並びに座った。
いつもの間隔より近くに。

「今日は仲良くな」

おでん屋のおじさんはそう言って、いつもの皿を私に渡してくれた。
ちくわ、ハンペン、大根、黄色の辛子を皿の横につけて。
野月さんには牛スジ、卵、餅巾着。
私と野月さん、どちらが言い合わせたわけでもなかったけれど、皿を交換した。

「へっ!?」

おじさんは変な声を出して、私と野月さんを交互に見た。
最初に来た時、間違えたのはおじさんで、なんとなく相手の好きなものを食べて見るのも悪くないと思って黙って食べていた。
そのうち、相手が訂正するだろう。
そう思っていた。

「やっぱり好きな物がいいですね」

「そうだね」

「どうして皿の交換をしたんだ?」

お互いの嬉しい顔が見たかったから。
きっと私と野月さんが考えていることは同じだろう。
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