優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
新人秘書に今園室長は厳しい口調で言った。

「場合によっては解雇もあり得ます」

秘書室に入る新人は表情を硬くして頷いていた。

「妹さんには私が作成したマニュアルを机の中に入れておきましたから、最低限のことはできるでしょう。これは私の仕事です。ご心配なく。広報部主任。ご自分の業務に集中してください」

立場の違いを思い知らされた気がして、今園室長に会釈した。
そうだった。
今、私は新人を広報部に連れて行き、広報部全体への挨拶をさせ、仕事の説明をしなくてはいけない。
なんとか、冷静さを取り戻して新人が集まる所に戻り、入社してきた新入社員に作り笑いを浮かべた。

「お待たせしました。広報部に案内しますね。私が広報部主任の呑海です。これからよろしくね」

日奈子と同じ年齢の社員達は初々しく、まだ学生っぽくてスーツに着られているという雰囲気だった。

「美人な人ね」

「感じがいい人だね」

「若いのに主任だって」

「仕事できそう」

ひそひそと新入社員が話す声が聞こえた。
息を吸い込み、背筋を伸ばした。
壱哉を食事に誘ってみよう―――同級生で壱哉の隣にいつもいた私はそれができる立場なのだから。
日奈子のことはきっと面倒見のいい壱哉がお世話をしてあげようと思っただけよ。
モヤモヤした気持ちを胸に抱えながら、自分にそう言い聞かせた。
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