優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「これ、今日の差し入れでさ。今、撮っている主人公の母親役の人が大量にタイ焼きを差し入れてくれて。美味しかったから、小耶子(さやこ)にも食べさせたくてもらってきた」

『小耶子』『渚生』そう呼び合って、まだそんなに経っていない。
少しぎこちなさを残して呼び合う私達が恋人にはなれないのは当たり前。
そもそも恋人がいる暮らしというものを私は経験したことがないので、どういうのが普通なのか、わからなかった。

「ありがとうございます」

ずしりと重いタイ焼きを受けとり、一つずつラップに包んで冷凍した。

「あ、ドラマみてたんだ」

さすがに自分のドラマを放送している局の番組はわかるらしく、ドラマの後のバラエティを見てすぐにあてた。

「今日のラストはとてもよかったです。続きが気になるくらいに」

「最後まで言おうか?」

「言わないでください!」

「なんで?演技とはいえ、俺が他の女に告白してるの見て楽しい?」

―――楽しかったと言いづらく、意地悪な質問だと思った。
私の気持ちの在処をさぐり、なおかつ、自分のドラマの感想を聞く。
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