優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
そんな容易く教えてなるものかと意地を張って黙っていると渚生が怒ったように言った。

「そっか。嫉妬なんかしないか」

「嫉妬はしていません」

「わからないな……」

ぽつりと渚生が呟いた。
あのドラマで最後に見せた表情に似ていた。

「ごめん。今日は帰る」

来たばかりなのに渚生は部屋から出て行った。
嫉妬しなかったのは本当だ。
なんて答えれば正解だったのだろう。
正直に答えただけなのに。

「うまくいかないですね……」

二人で食べようと思っていた冷たいタイ焼きが皿の上にちょこんと二個のっていた。
私は恋する乙女にはなれない。
恋する時期はとうに過ぎだのだから―――そう思って、彼が出演するドラマの録画データを消去した。
ときめきなど、遠くに捨てておこう。
無駄な感情だ。
私には。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ボールペンを落とし、頭をあげた瞬間にゴンッと机に頭をぶつけてしまった。
そのぶつけた体勢のまま、固まって痛みに耐えていると

「今園!?」

その一連の動作を見ていた壱哉さんが驚いて私を見ていた。

「どうした?何があった?」

「いえ、なにも、それより私に何かご用事ですか」
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