優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!

魔女の拠り所※47話

クーデターが起きた。
尾鷹家の社長は解任され、安島家が権力を握ってしまった。
よりにもよって、安島の息子が社長―――なんてことだろう。
会長が体調を崩して入院している時に社長ときたら、なんて不甲斐ない。

小耶子(さやこ)。怖い顔してるけど、どうかした?」

起きたばかりの渚生(しょう)が私の険しい顔に気づき、頬にキスをした。

「ま、待って。朝からやめてください」

慌ててベッドから這い出ると、渚生はえー?どうして?恋人同士なのにと言って笑っていた。
私の表情が変わるのが面白いらしく、すぐにああやってからかうのだ。
なんて油断ならない人だろうか。

「仕事か尾鷹のこと?」

「そうです。なぜ、わかるんですか?」

私の微妙な表情の動きも言葉も―――彼にはわかってしまうようで少しも隠せない。

「わかるよ。朝食は俺が作るよ。今日はオフだし」

渚生は私の部屋で過ごす時間が増え、キッチンのどこに何があるのか分かっていた。
それくらいに私達の関係は近い。
他人をこんなそばに置いたことのない私は正直戸惑っている。
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