優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「その痣、誰にやられた?」

渚生が私の肩と背中の痣に気付いたらしく、怖い顔で聞いてきた。

「すぐに治ります」

「そういう問題じゃない。浮気だと疑ってはいなかったけど、まさか怪我だとはね」

私が肌を見せるのを嫌がったら、無理やり脱がせておいてそのセリフはどうなのだろうかと思いながら、パジャマのボタンを留めた。
浮気だと少しは勘ぐっていたのでは?という疑惑が私に残っていたけれど、渚生は険しい顔をしていた。

「売れっ子俳優が人を殴ったら問題になりますよ。だから言いません」

「……安島か?」

「言いません」

「壱哉には言うんだろう?」

「嫉妬ですか?」

渚生は苦笑した。
私と壱哉さんが恋愛関係になることはない。
考えたこともない。
むしろ、緊張感のある関係だ。
壱哉さんを優しいと思っているのは日奈子さんだけ。
あの人は頭が切れすぎる。
私が手足となり働くことで安島を追い詰めてくれるだろう。
だからこそ、私は壱哉さんに従っている。
渚生の体を抱きしめた。
優しい渚生はきつく抱きしめ返さず、私の背中と肩が痛いだろうと手を浮かして、ほんの少しだけ触れていた。
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