優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！

魔女の帰還

「今園っー！！！」

尾鷹商事の秘書に復帰したその日、私の復帰を同期が喜んで会いにきてくれたのだと嬉しく思っていたが、それは間違いだったらしい。
―――会ったなり、野々宮さんが私の胸倉をつかんだため、とっさに足払いをかけた。

「ぎゃっ！」

廊下の床に転がった野々宮さんは痛かっただろうに誰かに見られてはとでも言うようにきょろきょろと周囲を見回しながら、すぐに立ち上がった。
根性がある人だ。

「何をするんですか？出会い頭に」

「それはこっちのセリフよ！あ、あんた！！！けっ、けっ―――」

「結婚しました」

がくっと野々宮さんが膝をついた。
渚生の会見でも見たのだろうか。
きっとそうだ。
他の人達も知っているはずなのだが、私が結婚したと言う事実と相手が渚生であるという現実をまだ受け入れることができないようだ。

「野々宮さん、膝をついてどうしました？膝に矢でも受けましたか？」

「私は武将かっ！わかってて、そんな真顔で言うんじゃないわよ」

「申し訳ありません。私なりのジョークのつもりでした」

「笑えるかっっ！！」

野々宮さんはしばし顔をふせて呻くような声で言った。