優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「ま、まあ、おめでとう。そう言いたかったのよ」

「ありがとうございます」

「俳優の野月渚生って、普段の生活はどんなふうなの?」

「一般の方と変わらないかと。普通に生きてます」

「私が聞きたいのはそういうことじゃないの!」

どういうことを?
今日の朝は朝食前にコーヒーをいれてくれた。
ただ地方ロケの撮影に入るからしばらくは会えない。
本日の渚生についてはそれくらいの情報しかない。

「飲みに行くわよ!」

「かまいませんよ」

飲んだところで私が話せることはないもないと思うのですが。
そう思っていたけれど、野々宮さんが嬉しそうにしていたので、それは伏せて置いた。
復帰した私と飲みに行くのがそんなに嬉しいのかと思いながら、久々の秘書室に入ったのだった―――

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

魔女健在―――そう言われて少々、荒っぽくなってしまったが、秘書室は少なくとも元に戻った。
秘書室に入るなり、掃除からスタートし、書類整理、重役の方達のスケジュール確認、季節のご挨拶のチェック―――まったくなってない!と叱りつけてしまった。
ホコリがたまった棚、茶渋のついたカップ、漂泊していない布巾。
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