優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「カウンターがおっさんで埋め尽くされている……」

居酒屋店主がぼそりと呟いた。
私と野々宮さんが見えていないようだ。

「それにしても、魔女とはよく言ったものよねぇ」

「ひどい言われようですね、野々宮さん」

「あんたも呼ばれてるわよ。裏を返せば、このお局が!ってとこ?」

「そうでしょうね」

ふっと笑って冷酒を一口飲んだ。
渚生といる時はスパークリングワインやビールが多い。
自分のような人間は他人に合わせることなどできないと思い込んでいた。
ずっと―――けれど、渚生が私に買ってきてくれたり、夕食の時に出す飲み物が私があまり嗜まないものであったとしても、一緒に食事をすると美味しく感じた。
こんな自分でも相手の好みに合わせることができるのだと驚いたけど―――それも悪くない。

「魔女ねぇ」

居酒屋の店主が私と野々宮さんを交互に見た。

「俺には魔女には見えないな」

「そうですか?」

「ふん!うまいこと言って、また飲みに来させようって魂胆ね!」

「それもあるけど、二人はまだまだ可愛いお嬢さんですよ」

ははっと店主は笑っていた。
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