優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
とりあえず、私の無職はなんとか回避できたみたいだった。
姉のおかげで―――

「よかったけど、尾鷹商事って一流企業だよね。私が働けるのかな」
私の卒業した大学からじゃ、まず受からない。

コネ入社もいいところだ。

「でも、きっと雑用係よね」

掃除係とかかも。
それなら、納得だった。
マルトクスーパーで買い物を済ませて、家に帰ると母親が忙しそうにしていて、帰ってきたのにまた出掛けるみたいだった。

「日奈子、今帰ったの?」

「あ、う、うん」

「裁判の準備で忙しいから、食事は冷蔵庫にいれておいて」

「わかった」

「お父さんの分もね」

こくこくっと首を縦にふった。
両親は弁護士で忙しい。
慌ただしく母親は必要な書類を手に事務所へ行ってしまった。
母親が嵐のようにいなくなると、ようやく私は買い物袋を持ってキッチンに入った。
夕飯の支度をする前にお茶でも飲もうかなと思っていると、リビングから緋瞳お姉ちゃんが顔を出した。
八頭身はありそうな完璧なスタイルで着ているのは安いTシャツとデニムなのにお洒落にみえる。
美人って得だよね…。

「日奈子、私にお茶入れて」

長い髪をかきあげて壁に寄りかかる姿はまるでファッション雑誌の一ページみたいだった。

「うん」

「水和子お姉ちゃんが尾鷹の会社に入れてもらえるようお願いしたらしいじゃないの」

「そうみたい」
< 4 / 302 >

この作品をシェア

pagetop