優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！
人生経験の浅い私はただ増えていく服とアクセサリー、靴やバッグを眺め、『これ着てみて』と言われた服を着せられると店員さんに化粧品売り場に連れてかれ、その売り場の人からメイクをされて、終わると化粧品が入った紙袋を渡された。

「い、いったい、なにが私の身に起きてるの？」

よろよろとしながら、さっきのショップの前に戻ると、会計はすでに済んでいて、買ったものは家に届けてくれると言われた。

「あ、あの。こんなたくさんは」

「日奈子は俺の秘書だな？」

「はい」

「秘書マニュアルに書いてあっただろう？」

言われてハッとした。
確か、役員の好みを把握することって書いてあった！

「そうでした。でも、なにか違う気がするんですけど」

「気のせいだ」

きっぱり言いきられると、私が間違っている気がして、素直にうなずいた。

「今からランチに行くぞ」

「まだお祝いするんですか！？」

「今の所までが仕事だろう？これからがプライベートだ」

自信たっぷりに言われて、私はうなずいた。
きっと壱哉さんの方が正しい。
私の頭の処理量がオーバーしていて深く考えるのをやめた。

「わかりました」

私の返事に壱哉さんは満足そうに笑い、うなずいた。
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