優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
ファッションビル近くの洋食屋さんで美味しいと有名なビーフシチューを食べた。
このお店は昔から、何度か壱哉さんと来たことがある馴染みの洋食屋さんだった。
「壱哉さん。このお店、好きですよね。私が学生の頃も連れてきてくれて」
私が高校生の頃や大学生の時に壱哉さんと偶然に出会って、ごちそうしてくれることがあり、その時は大抵、このお店だった。
「祖父母とよく来ていたからな」
「会長夫妻とですか」
うん、と壱哉さんはうなずいた。
そっかあ。
壱哉さんはおじいちゃんおばあちゃん子なんだなぁ。
「だから、ここは気を遣わなくていい」
「そうですね」
私もここのシェフや奥様とは気安く話せるし、店の雰囲気も静かで穏やかなクラシックミュージックが流れている。
「こちらお客様からの特別な注文の品です」
コースの最後に出てきたのはホールサイズのイチゴのケーキだった。
「わあ、ケーキ!」
生クリームで花を作り、イチゴがずらりと上にのり、中にもたっぷりイチゴが入っている。
「日奈子ちゃん、社会人おめでとう」