優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
席までシェフと奥様がお祝いに来てくれた。

「ありがとうございます」

「早いものね。初めてこの店に二人で来たときは中学生と高校生の可愛らしいカップルで」

カップル!?
そ、それって言わば、恋人同士と思われていたってこと?

「日奈子ちゃんがお姉さんとケンカして泣かされて、それで道を歩いていたのを壱哉君が連れてきたんだったね。ビーフシチューを食べたら、泣き止んでね」

「そっ、そうでしたっけ?」

恥ずかしい。
覚えてないけど、多分、ケンカして泣かされるとしたら、きっと緋瞳お姉ちゃんだろう。
水和子お姉ちゃんなら、私が泣くまで怒りつけたりしないし。

「ケーキ、おいしいです」

甘さ控えめの生クリームに甘酸っぱいイチゴは私の大好きな組み合わせで、大満足だった。

「幸せそうに食べるな」

「そ、そうですか?壱哉さんにケーキ、とりましょうか?」

シェフがホールサイズのケーキを切り分けてくれてあった。

「これでいい」

私の手をつかむとフォークを自分の口に持っていった。

「ケーキ、おいしいな」

「は、はい。そうですよね」

し、心臓が止まるかと思ったー!!
心臓がばくばくした。
私を殺す気ですか。
彼氏いない歴年齢の私になんて真似をっっっ!
し、しかもフォークっ。
きっと私は今、耳まで赤いに違いない。
食べたケーキは美味しかったけど、壱哉さんのことを意識しすぎて、口の中に入れたケーキを飲み込むのに四苦八苦したのはいうまでもない―――
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