優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「そうだ。日奈子。お隣の野月(のづき)さんにイチゴをもらっただろう?お礼に煎餅(せんべい)の詰め合わせを持って行ってくれ」

リビングのテーブルに煎餅の詰め合わせが置いてあった。
サンダルをはき、隣の家に行くとインターホンを押した。

「はい。あ、日奈子ちゃんか」

渚生(しょう)君、今日はお仕事じゃなかったの?」

「オフだよ。明日は朝から夜中まで撮影でキツいから、今日は寝ていたんだ」

そんなところをお邪魔してしまった。
なんて間の悪い私だろうか。
すぐに渡して帰ろう。

「これ、私の両親からでイチゴのお礼です」

「うん?」

じいっと渚生君が私の顔をみた。
こんな普通を絵に描いたような顔を。

「もしかして、壱哉とでかけてきた?」

「どっ、どうしてそれをっ」

「いつものメイクと違うし、髪型もね。それに壱哉が入社のお祝いをするって俺にわざわざ連絡してきたからね」

「渚生君に?」

「あいつはああ見えて、けっこう余裕がない男だよ」

「はあ?」

言っている意味がわからず、首をかしげた。

「まあ、楽しかったなら、よかった」

「わ、わかりますか?」
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