優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
思わず、背筋を伸ばした。

呑海(どんみ)とは友人だ」

お姉ちゃんと友人?
どうして今それを言うのかわからなかったけど、うなずいた。

「俺がす―――」

「ドン子、いるっ!?」

バンッと役員室のドアが開いて、壱哉さんに入ってきた人がぶつかった。

杏美(あずみ)ちゃん?どうしたの?」

「まだいたわね。送ってあげるから、ちょっと顔貸しなさいよ」

「呼び出しっ!?」

杏美ちゃんが怖いんだけど。

「杏美。俺は日奈子に話が」

「お兄様。それ、急ぎなの?」

「急ぎと言えば、急ぎだが」

「違うのなら、後にして」

杏美ちゃんに言われて、壱哉さんは恨めしい顔をしていた。

「行くわよ、ドン子。もたもたしないで」

「う、うん。お先に失礼します」

ぺこっと壱哉さんに頭を下げると、去り際、渋い顔をして見えた。
そういえば、何を言おうとしていたんだろう。壱哉さん。
杏美ちゃんに引きずられるようにして部屋を後にすると、杏美ちゃんは言った。

「言っておくけどっ、あんたのためなんかじゃないんだからね!」

「うん??」

何が言いたいんだろう。
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