優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
第14話 クビは困ります!
いつものように壱哉(いちや)さんと出社すると、いつもより視線が痛く感じた。
でも、それは私にというよりは壱哉さんが見られているようだった。
ひそひそと話す声が聞こえていた。

「やっぱり本命は違っていたのね」

「おかしいと思ったのよ」

「専務の狙いは別の所だったんだな」

「将来を考えて面倒をみていただけか」

何の話だろう。
エレベーターに乗ると静かになったけど、隣の壱哉さんはいつもより機嫌が悪く見えた。
会話がそんなに多くないから、お互いに話さないけど、今日は特に静かだった。

「ほうじ茶をどうぞ」

いつもはコーヒーだけど、ほうじ茶にした。

「ありがとう」

「いえ」

「今日はほうじ茶?」

「壱哉さん、お腹痛いのかと思って。胃に優しくほうじ茶にしました」

「俺が!?」

「違うんですか?」

「……ああ」

なぜ、そうなるという顔で私を見ていた。

「難しい顔をしていたから」

「これは……」

壱哉さんは自分の顔を覆った。
お腹痛いわけじゃなかったんだと思いながら、席に戻ろうとすると腕を掴まれた。

「本当にわかってないのか」

もしや秘書失格―――?
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