優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
私が待ち合わせの店に入ると、すでに壱哉と渚生が飲んでいて、なにか話していた。

「祖父母から相続した」

「金持ちは違うなあ」

周りの女性は二人を見て、声をかけるかどうか迷っているみたいだった。
おあいにく様。
私はスッとその視線の間にわざと入り、席に座った。

「待たせたかしら?」

「いや」

「大丈夫だよー」

壱哉はスーツだったけれど、渚生はバーとレストランが一緒になったお店にサングラスにトレーナー、カーキ色のワークパンツというラフな服装なのに浮いておらず、むしろ常連客のような風格だった。
私が二人の間に入ると

「あんな美人じゃ、私達は相手にされないわね」

「レベルの高い男には相手がいるものよねー」

なんて、言っているのが聞こえてくる。
当然よ。あなた達を相手になんかするわけないでしょ?

「それじゃあ、シャンパンでまずは乾杯しておこうか?」

「二人で先に飲んでいたくせによく言うわ」

「まあまあ」

シャンパンをグラスに注ぎ、渚生は明るく言った。

「それじゃあ、乾杯!」

壱哉は無表情だったけど、いつものことなので気にしていない。

「壱哉。私の契約本数、すごいでしょ?営業部よりも私は役に立つわよ」
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