優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「いいねぇ。俺も会社でそういうのやろうかな」

「セクハラで訴えるわよっっ!」

安島常務の言葉に杏美ちゃんが怒鳴った。

「悪ふざけもそこまでにしてください。尾鷹専務、安島常務」

今園(いまぞの)室長の冷ややかな声に私を押さえつけていた手が緩んだ。

「会長夫妻は欠席だそうです」

「わかった」

壱哉さんは低い声で無表情にになり、私の体を離した。
それを見た杏美ちゃんがわたしの手を引き、ダッシュでその場から逃げ出した。

「あ、杏美ちゃん?会議がっー!!」

「取締役会なんかでなくてもいいわよっ」

「おい」

「あー」

キレた杏美ちゃんに力一杯ひっぱられ、連れされられてしまい、壱哉さんと安島常務は秘書不在で会議に出ることになってしまったのだった。
< 68 / 302 >

この作品をシェア

pagetop