優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「さっき、お兄様が社内で抱き合っていたって話を聞いたでしょ?」

「聞いたけど、そんな噂があったなんて、知らなかったよね。びっくりしたよね」

「もしかして、今知ったの!?」

杏美ちゃんが飲んでいたアイスティーを吹き出しかけた。

「う、うん、杏美ちゃんもでしょ?」

「そんなわけないでしょっっ!!この噂、流れてから大分経ってるんだけど」

「嘘っ!」

「これだからドン子は。どれだけ鈍いのよ」

知らなかったのは私だけみたいだった。

「でも、転びそうになったのを支えただけだって#壱哉__いちや__#さんが言っていたし」

「相手が問題よ」

イライラと杏美ちゃんが皿の上のシフォンケーキをフォークでバラバラにしていた。
食べにくいと思うんだけど……。

「相手はね、気づいたと思うけど、水和子(みわこ)さんよ」

「えっ!お、お姉ちゃん!?」

「気づいてなかったのっ!?」

「ご、ごめん」

なぜか謝ってしまった。

「私も現場を見たんだけど、あれはつまずいたふりをして、お兄様に支えさせたのよ!今までもああいう女は山ほどいたから、わかるのよね。けど、水和子さんがあんな真似するとは思わなかったわ」
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