優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
水和子お姉ちゃんに勝てるわけなくて、みんな身を引いて行った。
それは私だけじゃない。
周りの女の子達全員がそうだった。
いつも最後に残ったのは水和子お姉ちゃんだけ。
敵うわけがないんだけど……。
そう思いながら、迎えに来てくれる壱哉さんを見るとその気持ちが粉砕されてしまうから不思議だ。

「おはようございます」

「おはよう」

いつもの黒塗りの車に運転手さんじゃなく、壱哉さん自らが運転していた。

「今日は運転手さんじゃないんですね」

銀のメルセデスベンツに乗った壱哉さんは運転する姿もカッコいい。
神様ありがとうございます。
朝からこんなごほうびを。

「今日、日奈子に話したいことがあって」

「はい」

どこか固い声の壱哉さんに私は真面目にうなずいた。

「夜、食事に行かないか?」

「えっ!?わ、私とですかっ」

「他に誰がいるんだ……」

確かに。
私しか車に乗っていない。

「夕飯は作らなくて大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。作り置きしてありますから、母にメールしておきます」

冷凍庫にカレーと冷蔵庫にはマリネサラダが入っているから、あとはインスタントのコーンスープを出してもらえば、夕飯は大丈夫なはず。
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