優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「卒業したら結婚って話だったけど、働いてみたくて無理を言って入社したのよ。そしたら、婚約者の秘書でしょ?働くも何もないわよ」

「婚約者!?」

安島常務を見ると頷いていた。

「友達に教えてないのか。杏美が高校生の頃からの婚約者だよなあ?」

「高校生の頃から……」

「そういうことだから、結婚式に招待してあげるわね。友達として」

友達という単語を杏美ちゃんは強調して言った。

「う、うん」

気づくと、壱哉さんのスーツの端を握っていた。
ハッとして、手を離すと優しい眼差しで私を見下ろしていた。

「俺が結婚すると思ったのか」

「えっ!?はあ……とんだ勘違いをしまして」

「本当にな」

ふっと笑って私の背中を押した。
微笑んだ壱哉さんが珍しかったのか、安島常務は目を見開いて壱哉さんの顔を凝視して、それを見た杏美ちゃんも笑っていた。
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