優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！

「杏美(あずみ)が結婚したら、次は俺の結婚を両親は考える」

壱哉さんが結婚―――胸が痛んだ。
当たり前だよね。
壱哉さんは尾鷹(おだか)の家の跡取りだし、婚約者がいないのが不思議なくらい。

「結婚は好きな相手としたい」

「そうですよね」

真剣な顔をして、壱哉さんが言ったので、私もそれを肯定するように力強くうなずいた。

「昔からずっと日奈子のことが好きだった」

聞き間違えた？
今、私の名前だった？
大丈夫！？

「気づいてたと思うが」

「あ、あのっ！わ、私ですか？本当の本当に！？」

「ああ」

夢かも。
これは夢だよっ！絶対そうに決まってる。
頬をつねってみたけど、痛いだけで目はバッチリ覚めていた。
ど、ど、どういうことっ―――！？

「水和子(みわこ)お姉ちゃんじゃなくて私ですか？こ、こんな鈍臭くてトロくて、バカなのに」

「日奈子はバカじゃない。答えは？」

一気に自分の顔が赤くなったのがわかった。

「わ、私も壱哉さんのことが好きです」

嫌いなわけがない。
昔から憧れの人で、私に優しくしてくれる人なんてそんな多くない中でいつも親切にしてくれた。