優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
熱に浮かされたような顔で壱哉さんを見つめていた。
こんなこと現実にあっていいの―――?そう思いながら。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


そ、それで、なにがどうなって、こうなったの!?
ホテルのスイートルームだと思うんだけど、サラッと部屋に来て二人でいる。
わ、私、心の準備がっ!!
下着だって、子供っぽいし、そ、それにっ。
プチパニックもいいところだった。
私の心の声がわかるのか、壱哉さんは笑っていた。

「なにもしない。今日は一緒にいたいだけだ」

「そ、それなら平気ですけど」

緊張しすぎて、心臓が口から出るかと思ったよー!

「日奈子が杏美の所に泊まると家に連絡しておくように言ったから」

いつの間に。
スマホ画面を見ると、杏美ちゃんからの返信がきていた。
『日奈子をどうするつもりよ!誘拐犯!』
誘拐犯って!?

「日奈子」

ぽすと壱哉さんの頭が肩にのせられた。

「やっと恋人として触れられる」

声と同時に息がかかるって、心臓が飛び出しそうになった。
同じソファーに座っているだけでもドキドキするのに。
肩にのせられた頭をそっとなでた。
初めて自分から壱哉さんに触れた。
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