優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！
さらりとした黒髪が指をすりぬけて落ちていく。
至近距離に迫る壱哉さんの顔に目を閉じた。
唇の感触に体を震わせると、壱哉さんが気づき、優しく抱き締めた。
何度も角度を変えてキスを繰り返しされると、終わりかと思っていたのに首や鎖骨にもキスを落とした。
服の隙間から手が入りこみ、体を撫でられると頭がくらくらしてもう限界だった。

「い、壱哉さん、今日はなにもしないっ……てっ……言ってた……」

これ以上は無理―――ついていけずに涙目になっていた。

「悪い。日奈子のペースに合わせるって決めてたのに」

壱哉さんを見上げると、顔を赤くした壱哉さんが私の顔を手で隠した。

「日奈子。その顔は少し困る」

窓に映る自分の顔を見ると、とろんとして、まるでねだるような表情を浮かべている。
ハッとして、顔を覆った。

「ご、ごめんなさい！」

「謝らなくていい」

うつむいた私の頭をぽんっと叩いて壱哉さんは言った。

「今日は一緒に眠ろう」

「はい」

そう言った壱哉さんの顔を仰ぎ見ると、優しい微笑みを浮かべていた。
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