優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「えっ……でも、壱哉くんはお姉ちゃんの誕生会に招待されてるから……」
「行かないよ」
自分の手袋を片手を外してはめてくれた。
もう片手は手を繋いだ。
コンビニで肉まんと温かいお茶を買ってくれて、それを手に歩いた。
「寒くない?」
「あったかい」
首にかけてくれたマフラーが暖かかった―――
抱き締められて眠った暖かな腕がその記憶を揺り起こして、懐かしく感じた。
「壱哉さん―――」
朝になり、目を覚ますと壱哉さんの腕の中にいたはずが、ベッドにいない。
夢オチかと思ったけど、私がスイートルームに泊まれるわけない。
広いベッドルームをよろよろと抜け出して、リビングルームに行くとソファーで眠る壱哉さんがいた。
わ、私ときたら、まさか。
壱哉さんをソファーで寝かせて、自分はあの広いベッドで眠りこけていた!?
な、な、なんてことをしてしまったんだろうか。
さぁーっと血の気が引いた。
これは土下座レベルの失態では?
「日奈子?」
目を覚ました壱哉さんが私を見つけて手を伸ばした。
「なにしてるんだ?うずくまって」
う、うずくまってるわけじゃ。
「学芸会の亀の役を思い出すな」