優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
第23話 姉の罠
月曜日、午前中に役員会議があり、私一人で仕事をしていると杏美(あずみ)ちゃんが襲来して、私の前に座った。

「どうだったのよ!?吐きなさい!吐くのよ!」

「杏美ちゃん、く、苦しい」

会ったなり、胸倉をつかまれて、ぐらぐらと揺さぶられていた。

「な、なにもないよー!」

涙目になりながら言うと、杏美ちゃんは首を横に振った。

「そんなわけないでしょっっ!一夜をともにしてなにもない!?誰が信じるのよ」

「もー!壱哉さんだよ!?あの壱哉さんがそんなっ」

「は?ドン子はこれだから。お兄様が優しいと思ってんのはあんただけよっっ!」

「またまたぁー」

ぽすぽすっと肩を叩くと、振り払われた。
ひどい。

「優しいだけの人間が尾鷹(おだか)商事の専務にまでなれるわけないでしょ。しかも、年上の常務を差し置いて」

「ああ……杏美ちゃんの婚約者の」

「今は私の婚約者ってのを忘れなさいよっ!ドン子の話をしてんのっ」

「ご、ごめん」

もー。すぐ怒るんだから。

「でも、本当に何もなくて。壱哉さん、私のペースに合わせてくれるって言ってくれて。本当にカッコいいよねー」
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