悪女と呼ばれた聖女が、聖女と呼ばれた悪女になるまで
破棄
「サブリナ・ロイド! 王太子である私の婚約者という地位を笠に着た暴虐、もはや看過出来ん! お前との婚約は今、この場をもって破棄とする!」
「っ!?」
パーティー会場に響き渡ったリカルドの声に、居合わせた者達は息を呑み、何事かと声の主に目を向けた。
大広間でサブリナに近付き、声を上げたのは王太子・リカルド。その背後には、数人の側近が控えている――アデライトはその隣にいないが、それ以外は一回目と同じである。
「リカルド様……暴虐だなんて、私は何も……」
一方、婚約破棄されたサブリナは突然のことに青ざめながらも、何とかこの場を収めようとしていた。
そもそも卒業パーティーなのに、退場せずに話を進めるのかとアデライトは内心、サブリナに呆れた。もっとも、リカルドの追求が止まることはなかったが。
「白々しい。勝手に国費に手を出したことが、暴虐ではなくて何になる!」
「なっ!?」
「王室助成金を使い果たし、更に父に金を国費を横領させて贅の限りを尽くした悪女! その悪事を誤魔化す為に、わずかばかりの金を民に配ろうとしたのだろう?」
「そんな……っ」
「ご、誤解です! 娘は民の、いや、この国の為にっ」
「衛兵! この者達を捕らえろっ」
「「「はっ!」」」
一回目の時のように、冤罪ではない。ノヴァーリスにも確認して貰った。ロイド父子による横領は事実である。
悪事を暴かれ、しかしサブリナと娘を庇おうとしたロイド伯爵が、その理由――贅沢の為の横領を否定しようとしたが、リカルドに命じられた兵士達によって捕らえられて押さえつけられ、二人は跪かされた。
以前のアデライトのように、サブリナの薄紅のドレスが兵士に踏まれた。アデライトとは違い、サブリナは媚びるような涙目でリカルドを見上げたが、リカルドはハッと鼻で笑うだけだった。
「悪事を偽善で誤魔化そうなど、恥を知れ! アデライト嬢が、良案を思いついてくれた……彼女こそが、王太子妃に相応しい!」
「リカルド様!?」
「女の浅知恵でございます……でも、お金を使い込んだくせにあなたは何を仰っているのです? 民にとっては、落ち着くまで税を払わない方が良いんです」
「なっ……!」
リカルドに促され、周囲の視線が向いた中、アデライトはしれっとサブリナから奪い取った案を告げた。しかしそれよりも、勢いに任せてアデライトを新たな婚約者にしようとしていることに気づいたのか、サブリナが声を上げた。
「哀れな方」
「ふざけるな、この泥棒猫っ!」
その声を、アデライトが制した。言葉同様、同情する視線を向けるとサブリナが緑の瞳をギラギラと光らせて睨み、アデライトに暴言を吐いた。
「フフ、横領した女の台詞じゃないよね」
宙に浮き、アデライトに寄り添うノヴァーリスの言葉は至極当然である。
まあ、確かにアデライトはサブリナの思い付きを横取りした。そういう意味では、サブリナの言っていることは間違いではない。
しかしそもそも自分の金ではなく、国費を使おうとしたことが問題なのだが、サブリナ達は解っていない。
解っていないから、サブリナは救いを求めて会場の中に視線を巡らせた。
しかし、リカルドの両親である国王夫妻はそんなサブリナを一蹴した。
「……その罪人どもを、引っ立てよ」
「目障りです」
二人の言葉に愕然としたところで、サブリナ達父子は兵士達に引きずられるようにパーティー会場を後にした。
「っ!?」
パーティー会場に響き渡ったリカルドの声に、居合わせた者達は息を呑み、何事かと声の主に目を向けた。
大広間でサブリナに近付き、声を上げたのは王太子・リカルド。その背後には、数人の側近が控えている――アデライトはその隣にいないが、それ以外は一回目と同じである。
「リカルド様……暴虐だなんて、私は何も……」
一方、婚約破棄されたサブリナは突然のことに青ざめながらも、何とかこの場を収めようとしていた。
そもそも卒業パーティーなのに、退場せずに話を進めるのかとアデライトは内心、サブリナに呆れた。もっとも、リカルドの追求が止まることはなかったが。
「白々しい。勝手に国費に手を出したことが、暴虐ではなくて何になる!」
「なっ!?」
「王室助成金を使い果たし、更に父に金を国費を横領させて贅の限りを尽くした悪女! その悪事を誤魔化す為に、わずかばかりの金を民に配ろうとしたのだろう?」
「そんな……っ」
「ご、誤解です! 娘は民の、いや、この国の為にっ」
「衛兵! この者達を捕らえろっ」
「「「はっ!」」」
一回目の時のように、冤罪ではない。ノヴァーリスにも確認して貰った。ロイド父子による横領は事実である。
悪事を暴かれ、しかしサブリナと娘を庇おうとしたロイド伯爵が、その理由――贅沢の為の横領を否定しようとしたが、リカルドに命じられた兵士達によって捕らえられて押さえつけられ、二人は跪かされた。
以前のアデライトのように、サブリナの薄紅のドレスが兵士に踏まれた。アデライトとは違い、サブリナは媚びるような涙目でリカルドを見上げたが、リカルドはハッと鼻で笑うだけだった。
「悪事を偽善で誤魔化そうなど、恥を知れ! アデライト嬢が、良案を思いついてくれた……彼女こそが、王太子妃に相応しい!」
「リカルド様!?」
「女の浅知恵でございます……でも、お金を使い込んだくせにあなたは何を仰っているのです? 民にとっては、落ち着くまで税を払わない方が良いんです」
「なっ……!」
リカルドに促され、周囲の視線が向いた中、アデライトはしれっとサブリナから奪い取った案を告げた。しかしそれよりも、勢いに任せてアデライトを新たな婚約者にしようとしていることに気づいたのか、サブリナが声を上げた。
「哀れな方」
「ふざけるな、この泥棒猫っ!」
その声を、アデライトが制した。言葉同様、同情する視線を向けるとサブリナが緑の瞳をギラギラと光らせて睨み、アデライトに暴言を吐いた。
「フフ、横領した女の台詞じゃないよね」
宙に浮き、アデライトに寄り添うノヴァーリスの言葉は至極当然である。
まあ、確かにアデライトはサブリナの思い付きを横取りした。そういう意味では、サブリナの言っていることは間違いではない。
しかしそもそも自分の金ではなく、国費を使おうとしたことが問題なのだが、サブリナ達は解っていない。
解っていないから、サブリナは救いを求めて会場の中に視線を巡らせた。
しかし、リカルドの両親である国王夫妻はそんなサブリナを一蹴した。
「……その罪人どもを、引っ立てよ」
「目障りです」
二人の言葉に愕然としたところで、サブリナ達父子は兵士達に引きずられるようにパーティー会場を後にした。