俺から逃げられると思うなよ



「あの、だから、最後に抱き締めてくれませんか…?」



なんだそれ。



彼女の腕を引き、華奢な肩を少し強めに抱き締めた。




「はぁぁ、柚くんの匂いだ〜」



彼女は目に涙を溜めながら俺の顔を見てそう言った。


こっちの気も知らないで。




「あぁ、もう。俺は、和香の事が本気で好きなんだよ」



初めて彼女の名前を呼んだ。



「いつから好きになったかは知らない。でも自覚したのは半年くらい前だ」


「柚くん…」


「他のやつに言い寄られてるのが堪えた。柄にもなく俺のなのにって思ったんだ。」



離したくない

離れられる気がしない




「柚くん、私は」

「嫌だ。離れたくない」



ああ、みっともない。
大人気ない。



「俺と付き合って」



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