The previous night of the world revolution~T.D.~
「どれどれ?…お〜!…お〜?」

「どうですか?」

「凄いね!本物の絵みたい!」

本物の絵だからね。

何が言いたいのか分からないけど、ニュアンスだけは伝わってくるよ。

「へぇ〜。シャーペンって黒だけなのに、こんなにリアルに描けるんだ〜…」

それが鉛筆だったら、もっと良い出来だったと思うんだけど。

「ちなみに、今セカイさんがちょっと気にしてる、鼻の頭に出来たニキビも、完全に再現…」

「そういう匠の気遣いは要らないよ〜!もー!」

「ついでに言うと、一昨日に『あー切り過ぎた〜!』って言ってた左右非対称の眉毛も…」

「お馬鹿〜っ!」

ぺしこっ、と叩かれた。痛い。

「ルーチェス君ったら、もう、悪い弟君なんだから!」

「悪い弟です。宜しくお願いします」

「でもルーチェス君が描いてくれたから、ニキビのところだけ消して、部屋に飾っておこ〜っと」

「…」





…その後。

「消し過ぎて鼻なくなったー!もう一回描いてー!」と、半泣きで訴えられたので。

ニキビを詐称した、後付けの鼻を描き加えてあげた。

さて、こんなにわか絵師っぷりで、本物の美術学部で通用するのかどうか。

明日から、実に楽しそうなスパイ生活が始まりそうだ。

…とはいえ。

本命は、学部の講義ではないのだが…。

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