The previous night of the world revolution~T.D.~
午前は、昨日のオリエンテーションの続きと、健康診断等が行われ。

講義が始まったのは、午後からだった。

と言っても、最初の講義は大変つまらないものだった。

休憩を挟みながら、計二時間かけて、『ローゼリア学園大学の成り立ち』なる講義を、新入生全員が受けさせられた。

これには、さすがの僕もうんざりした。

どの大学でも大抵、こういう大学創設に至るまでより経緯、みたいな、

「その説明要る?」っていう御高説を賜るものだが。

ローゼリアの名のついた大学だけに、この講義は大変熱のこもった講義だった。

ローゼリアと言えば、言わずもがな、今は退位して優雅な田舎暮らしを楽しんでいる、我が姉のことだ。

世間では彼女のことを、ローゼリア元女王と呼ぶ。

そしてこの講義は、その元女王が在位中に為した偉業について、褒め称えるというものだった。

おまけに、二時間の講義後、講義の感想と考察を短いレポートにまとめ、提出せよとのこと。

なんという苦行だろう。

広々とした講堂のスクリーンに、姉が在位中に行ってきた様々な活動が、次々と映し出されていき。

さも、元女王が名君であったかのように語られていたが。

僕に言わせれば、あの人のやっていたことなんて、偉業でも何でもない。

大学側に言わせれば、この大学を建てたこと自体が、ローゼリア元女王の偉業の一つ、なのだそうだが。

僕にとっては、片腹痛いというものだ。

あの人は、国民の為に何かをしようとしたことは、一度もなかった。

自分と、自分の大事なものを守ること以外、何も考えちゃいなかった。

一番近くで見てきたから、分かる。

いつだって、国民の為に何かをしようとしていたのは、帝国騎士団だ。

帝国騎士団が立案し、姉のローゼリアに奏上し。

姉は、ただ適当に頷いていただけだ。

帝国騎士団が立案した意見が、自分に害のないものなら許可し。

自分にとって不都合なことが起きると判断したら、却下していた。

あの人がしていたのは、たったそれだけのこと。

だから、この学園もそう。

新しい大学を作るのに、記念としてあなたの名前を使っても良いかと尋ねられ。

自分の名前のついた大学なんて、まるで自分の権威を示すシンボルのようで、誇らしい。

そんな安易な気持ちで、首を縦に振っただけ。

その程度の価値でしかないのだ。この大学は。

それをまぁ、女王の努力の末生まれたみたいな、美談にしちゃってさ。

しかも、あの女が何で、どうして退位に追い込まれたかについては、何も言わないの。

片腹痛いよ、本当。

一番大事なことは言わないで、嘘臭いことばっかり。

しかもこんな馬鹿みたいな話を、うだうだうだうだ二時間も。

僕もうんざりしていたけど。

新入生達も、最初の一時間くらいは、真面目に聞いていたけど。

彼らも、途中から段々と飽きてきたらしく。

メモを取る手も止まり、胡散臭そうに聞いていた。

うん、胡散臭いから聞かなくて良いと思うよ。

で、問題は、この講義後に提出させられる感想文だな。

さて、何と書いたものか。

勿論、「あいつ、大したことしてないよ」なんて真実を書く訳にはいかないので。

かと言って、元女王の悪口を書いて、教授達に目をつけられても嫌だし。

…仕方ないので、「はいはいそうね凄いですねー」みたいな、無難なことだけ書いておいた。

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