The previous night of the world revolution~T.D.~
「ルルシールルシールルシー!俺に会いに来てくれたんですね〜!」

「くっつくな。フェロモンが移る!」

「移してるんです〜。俺のフェロモンで、ルルシーを俺色に染め上げて…」

「やめろ」

…。

…素直に、凄い、と思う。

「…と言うかルレイア!」

「はい!プロポーズですか?」

「違うわ!それよりお前、何ハーレム会員に引っ越しの手伝いさせてんだ!ちょっとは自分でやれ!」

こういうことを、ルレイア殿に面と向かって言えるということ。

もうそれだけで、尊敬に値する。

「えー?自分でもやってますよ〜」

何処が?

「それよりエリュシア。ルルシーにも紅茶。全く気が利かないですねこの下僕は」

「申し訳ございません」

またしても、あの気の毒なエリュシアという女性が怒られる。

たかが紅茶の一杯や二杯で。

しかも若い女性なのに、下僕呼ばわりまでされて…。

すると。

「こらっ!」

「あいた!」

ルルシー殿が、ルレイア殿の後頭部をひっぱたいた。

あの!死神と呼ばれるルレイア殿の後頭部を、こらっ!感覚でひっぱたいたのだ。

そんなことが出来る人間が、このルティス帝国に、他にいるだろうか。

いや、ルティス帝国を出て、世界規模で探しても、多分いない。

そんな末恐ろしいこと、考えただけであの世の端が見える。

「エリュシアさんを小間使いにするんじゃない!いつも言ってるだろ」

「小間使いになんかしてませんよ!下僕にしてるんです」

「同じだろ!」

ごもっとも。

凄い。俺がツッコみたかったことを、全部ルルシー殿が言ってくれてる。

有り難い。

情けないことに、俺ではとても意見出来なかったから。

「はぁ…全く」

ルルシー殿は溜め息をつき、くるりとこちらに向いた。

え。

「悪いな、仕事とはいえ、こんなろくでもない奴とルームシェアなんて…。先が思いやられるだろ」

「あ、いえ、はい。あっ、いえ、そんなことは」

いきなり話しかけられて、つい本音が。

しかしルルシー殿は、そんなことは気にもしていない風に。

それどころか、俺を労うかのように言ってくれた。

「こいつには、ちゃんと大人しくしておくよう、言い聞かせておくから…」

「は、はぁ…ありがとうございます」

「何をぅ!失礼ですねルルシー。俺は最高に模範的で常識的な大人ですよ?」

何処が?

「何処がだ」

ルルシー殿、ことごとく俺のツッコミを言葉にしてくれる。

「良いかルレイア、決してルーシッドに迷惑を掛けるんじゃないぞ。大人しくしてるんだ。良いな?」

「俺はいつだって大人しい良い大人で…」

「良いから聞け!お前は他人を振り回す天才なんだからな。また突飛なことばっかりして、ルーシッドを驚かせたり、迷惑掛けるんじゃないぞ!心に刻んどけ!くれぐれも!」

「大丈夫ですって〜。俺は協調性溢れる大人ですから。ゴミみたいな帝国騎士団の人間とも、バッチリと仲良く同居を…」

「そういうところだよ!」

ゴミみたいと言われて、少し傷つきました。

まぁ、ルレイア殿の生い立ちを考えれば、ゴミ呼ばわりされても、言い返す言葉がないが。

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